飯塚病院呼吸器内科のブログ
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COPDと肺気腫と慢性気管支炎と気管支拡張症と・・・

再びスタッフ228号です(誕生日が・・・)。

さて、そんなこんなで、重大イベントが終わりましたので、少し勉強もしていきたいと思っています。
今日のテーマは、最近感じていたこと。
巷では、COPDやら肺気腫やら慢性気管支炎やら気管支拡張症やら、そういった言葉たちが混在しており、きちんと概念が理解されていないような印象を受けるときがあります。治療にも支障をもたらしている、とまで言ったら大袈裟ですが、混在していて違和感を感じるときがあります。そんなこんなで、その辺を少しまとめてみたいと思いました。

ひとつのきっかけは、ある60歳代の女性。関節リウマチがあり、気管支拡張症、慢性気管支炎をわずらっています。リウマチによる気道病変で間違いなさそうです。今までも何度か、その急性増悪で入院しており、今回もまた急性増悪で入院となりました。さて、既往をみてみると、COPDの記載が。たしかに何十年も前に数年多少の喫煙歴があるようですが、少なくともCT 上は気腫や気管支の壁が肥厚している感じはありません。呼吸機能検査では、一秒率も低下していません。はて、COPDはいずこから・・・??ちなみに、救急の場では、COPD急性増悪の疑いで、ステロイドの全身投与が開始されました。続いて、処方されている薬をみてみると、長時間作用型β刺激薬吸入(気管支拡張薬)+吸入ステロイドの合剤が。もちろん、喘息の指摘はありません。。。。

では、確認していきます。

* COPD *
【原因】タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することで生じた肺の炎症性疾患。
【診断基準】
①気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーで1秒率<70%
②他の気流閉塞をきたしうる疾患を除外すること(気管支喘息、びまん性汎細気管支炎、先天性副鼻腔気管支症候群、閉塞性細気管支炎、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、間質性肺疾患など)。

きちんと診断しようと思ったら、②が必要になるため、画像検査は必須になります。
その鑑別が必要なのかと言われると、やや答えに苦しみますが、COPD は主に喫煙を契機とした全身性の炎症性疾患で、喘息は主にはアレルギー性のTh2気道炎症によるもの、びまん性汎細気管支炎、副鼻腔気管支症候群、気管支拡張症などは慢性気道感染症という観点からその機序がアプローチされていたり、つまり基本的には病態が異なるので(治療方針も多少変わるため)、やはり鑑別は必要と思います。気管支拡張症なんかは、リウマチなどの膠原病が潜在している可能性もあれば、非結核性抗酸菌症(NTM)がいる可能性もありますし。
ただ、治療という点で考えれば、いわゆる喫煙者のCOPDなのかどうか診断が確定していなくても、閉塞性換気障害を呈する場合は、気管支拡張薬の適用がありえます。

日常臨床で、たまに遭遇する誤解は、喫煙者で息が苦しければ、それだけでCOPDと診断されている点です。もちろんCOPDの基準を満たす方もいますし、喫煙していて息苦しい時点で基準は満たさなくともCOPDっぽいとは言えると思います。ただ、オーバートリアージになってしまい、安易に処方された抗コリン薬吸入で尿閉になってしまい、泌尿器科にかからなければならなくなった方をみたこともありますし、実はCOPD ではなくて他の疾患だったということもありますので、少なくとも専門家としては、こだわりたい点かなとは思います。

ちなみに、今回の症例では、1秒率が低下していませんので、定義上はCOPDではありません。もともと長時間作用型β刺激薬吸入+吸入ステロイドの合剤も処方されていましたが、呼吸機能検査上、有意な気道可逆性があるわけでもなく、気管支拡張薬の有効性もさほど期待できないように予想されます。

と、ここで、ひとつの疑問が。
気管支拡張症の方って、そもそもCOPDになるんでしょうか??




もちろん喫煙していれば合併するでしょうけど、じゃあ非喫煙者の気管支拡張症の方はどうなんでしょうか。これは、気管支拡張症で、閉塞性換気障害の基準 (1秒率<70%)も満たしており、気管支拡張薬を使用していた実際の患者さんにも聞かれた質問です。
「自分は気管支拡張症なのに、なぜに気管支拡張薬を吸う必要があるのか??」
たしかに、そうですよね。そう思ってしかり。

実際には、気管支拡張症の方は、慢性の気道炎症がありますので、末梢細気管支領域での気管支内腔の粘液塞栓、気道壁の炎症細胞浸潤、平滑筋の肥厚、線維化などで、閉塞性障害が起こりえます。だから、気管支拡張症の方が閉塞性障害を来しても何らおかしくはありません。
ちなみに、この方は、閉塞性換気障害の基準は満たしますが、非喫煙者で、気管支拡張症ももっていますから、COPDとは言いません。

* 肺気腫 *
【定義】終末細気管支より末梢の気腔が肺胞壁の破壊を伴いながら異常に拡大しており、明らかな線維化は認めない状態。
➡病理形態学的、解剖学的に定義されています。胸部CTで気腫病変が比較的容易に診断できるようになっていますが、
CT上肺気腫=COPDではありません。
なので、個人的には、肺気腫という言葉は、病名というよりも、肺が壊れている状態、その形態を表している言葉、という風に認識したほうがよいように思っています。
また、気腫といわれている病変が、嚢胞だったり(ときに蜂巣肺ぽかったり)することもあり、画像上判別が難しい場合もあります。肺気腫っていわれてCTをみてみたけど、これは間質性肺炎だよね、というようなことも日常臨床ではあります。

今回の症例では、少なくともCT上気腫はありませんでした。

* 慢性気管支炎 *
【定義】喀痰症状が年に3ヶ月以上あり、それが2年以上連続して認められる場合。
➡臨床症状で定義されています。つまり、これも病名というよりも、あくまで病状のことを言っているという認識が必要と思います。喫煙だけでなく、他に原因疾患が潜在している可能性があります。とにかく長い間痰が多ければ、「慢性気管支炎」になってしまうわけで、ともすると、喘息や肺結核、気管支拡張症、慢性副鼻腔炎なんかも「慢性気管支炎」になっているかもしれない、というわけです。「慢性気管支炎」という診断は、安易にすべきではないように思います。なぜ喀痰が多いのか、考えなければなりません。

となると、やっぱり
慢性気管支炎=COPDではありません。
慢性気管支炎の方は、1秒率70%以上(単純性慢性気管支炎という言葉があります)のこともあれば、1秒率70%未満(閉塞性慢性気管支炎、いわゆるCOPDです)のこともあるわけです。

今回の症例では、慢性気管支炎の定義こそ満たしますが、COPD ではありませんでした。


ちなみに、この疾患概念の話には、歴史的な変遷があるので、その辺を知ると、なんとなく深みが増した気分になります。COPDのガイドラインやWikipediaなんかにも少し載ってますので、興味がある方は、一見の価値ありです。

少し長くなってきましたので、いったんここで切ります。
To be continued…
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by res81 | 2013-06-18 18:13 | COPD | Comments(0)
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