飯塚病院呼吸器内科のブログ
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咳嗽シリーズ① 咳嗽の機序

スタッフのTBです。

最近咳嗽について再勉強しましたので、実際的な所を少しずつアップしていきたいと思います。

とは言え、病的咳嗽がなぜ起こるのか?、を知らずしてその後の話はできませんので、本日は咳嗽の機序について軽くまとめます。

咳嗽とは
「気道内に貯留した分泌物や吸い込まれた異物を気道外に排除するための生体防御反応」

・・・当たり前と言えば当たり前、ですね。

では、咳が起こる機序を図示します。
Lancet 2008; 371: 1364–74より。
d0264356_417371.png

咳を起こす発端となる神経受容体は、迷走神経の終末枝です。図のの部位に分布しています。咽頭や喉頭では「上喉頭神経」と名付けられていますが、これも迷走神経の分枝です。
(以下追記 20150609)
   ↓
ここに加わった刺激は電気信号に変換されて、延髄孤束核の咳受容体に届けられます(図の点線部分)。また、大脳皮質にも信号が届けられ、相互作用が起こり遠心性に喉頭筋や呼吸筋に刺激が伝達され(図の実線部分)、咳嗽が生じます
ここでポイントですが、迷走神経の刺激がなくても、大脳皮質自体は咳中枢に刺激を送ることができるため、咳を起こすことができます。習慣性咳嗽(くせになっている)、心因性咳嗽(緊張すると咳が出る)などの原因はこれです。

次に、気管支のミクロ解剖と、咳を起こす経路を図示します。
またLancet 2008; 371: 1364–74より。
d0264356_4162935.png


微妙に経路が異なりますが、最終的には迷走神経が刺激されて咳嗽が起こります。
咳受容体として、以下の2つが想定されています;
 A. Aδ線維(迷走神経)の終末受容体(rapidly adapting receptors: RARs)
   ・機械的な刺激に直接反応
 B. 無髄神経線維C線維の神経終末
   ・炎症時に放出されるメディエーターや粘液がC線維終末を刺激
     →タキキニン・カルシトニン-gene関連ペプチドを分泌(特にサブスタンスPがメイン)
       =軸索反射
     →RARsが刺激される
             (THE LUNG perspectives 2013;21:329-333)
     (追記終わり)

病的咳嗽の機序を以下にざっとまとめます。
A. 気道壁表層(粘膜)を刺激する病態
①刺激亢進:生理的反射・・・異物、ガス、過剰分泌などが原因
②炎症によるもの:非特異的な機序
 →炎症により無髄神経線維(C線維)がタキキニン・カルシトニン-gene関連ペプチドを分泌(軸索反射)
  (特にサブスタンスPがメイン)
 →咳受容体(Aδ、迷走神経)が刺激される
 →延髄の咳中枢へ


 この範囲は正常の反応と言えると思います。

B. 咳受容体の感受性亢進
気道表層の神経であるC線維もしくはAδ線維が過敏になった状態を言います。 
*咳受容体感受性亢進と気道過敏性(=喘息)とは、意味が異なりますのでご注意を。

(20150609追記)
C線維の活性化によるAδ線維受容体の刺激が、咳受容体の感受性亢進機序の大きな役割を担っていると言われています。

[C線維の活性化の機序による分類]
(C線維に存在するトランスポーターや受容体を介した刺激経路で分類しています)
●transient receptor potential vanilloid 1(TRPV1)の活性化を介する
 ・アナンダミドトランスポーター:NOによる活性化
  気道炎症=アトピー咳嗽、喉頭アレルギー、GERDなど
 ・EP2,FP受容体:COX2→プロスタノイドによる活性化
  気道炎症=アトピー咳嗽、咳喘息、喉頭アレルギーなど
 ・ブラジキニンB2受容体:ブラジキニンによる活性化
  ACE阻害薬、GERDなど
●TRPV1の活性化を介さない
 ・TTX抵抗性Naチャネル
  多くの慢性咳嗽に関与
 ・TRPA1:タバコ煙、排気ガスなどで活性化
  GERD以外の多くの慢性咳嗽に関与
 ・ASCIs:プロトンにより活性化
  GERD
      (THE LUNG perspectives 2013;21:329-333)
*Aδ線維はATP受容体を介して直接刺激されることも報告されており、
  アトピー咳嗽などで重要な経路とも考えられています
  (日薬理誌 2008;131:429-433)

 (追記終わり)
①炎症(アレルギー性?):アトピー咳嗽、非喘息性好酸球性気管支炎
②下部食道の迷走神経刺激→咳受容体感受性亢進:GERD
③ACE阻害薬によるサブスタンスPの増加
④その他に、後鼻漏による咳嗽、喉頭アレルギー、
        かぜ症候群後持続性咳嗽(いわゆる感染後咳嗽)、
        などでも咳受容体感受性亢進の報告あり

C. 気道平滑筋の収縮
①平滑筋収縮による平滑筋内の知覚神経刺激:喘息、咳喘息
*咳受容体感受性の亢進は無いか、軽度と言われています

D. その他の迷走神経を刺激する病態
①下部食道の迷走神経刺激:GERD
②耳への刺激:耳にも迷走神経が分布!耳かきで咳が出ることがあります。

E. その他
①大脳皮質による咳中枢刺激:心因性、習慣性


ややこしかったでしょうか?
次回以降は、実際的な咳の臨床についてまとめていきます~
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by res81 | 2013-07-05 05:36 | 咳嗽 | Comments(4)
Commented by at 2015-06-01 09:49 x
違ってますよ
咳受容体のあたりです
Commented by res81 at 2015-06-09 06:35
あ様、コメントありがとうございます。
再勉強し、再整理してみました。AδやC線維以外の咳受容体の存在も示唆されているようで、そのあたりは難しく・・・
いかがでしょうか?
ご指導お願いいたします。
Commented by 横山 at 2016-11-28 13:50 x
こんにちは。咳のことを検索してこのブログをよみました。
私は、一年前脳外科手術中に、脳幹の近くで左の舌咽神経と迷走神経の一部を切断されました。
それ以後、昼夜を問わず咳発作が止まらず、睡眠も細切れにしかとれず、とても苦しんでおります。
のどの中の左側のあるところに、チリチリとした痛み痒みのような感覚が突如発生し、それは咳をたくさんしないと止まりません。
迷走神経の一部を切断したことによるとは思うのですが、これはいったい何が起こっているのでしょうか?
どうしたら治せるのでしょうか?
ちなみに声帯も麻痺して、嗄声になっております。

お分かりになることをお教え下されば幸いです。
Commented by res81 at 2016-12-08 17:47
横山様
コメントありがとうございます。大変つらい思いをされていると思います。まず、ネット上で個別の案件にお答えすることは難しいことをご了承ください。
一般論ですが、神経がある部位で障害されてその末梢側からの刺激の入力が断たれると、障害を受けた部位より中枢側のニューロン活動が異常に亢進して、自発的な異常インパルスを発生することがあると言われています。そのため、咳の神経経路である舌咽神経や迷走神経に障害が起きた場合、咳嗽が生じる可能性は十分にあると思います。また、声帯を支配する反回神経は迷走神経の分枝のため、声帯マヒが生じる可能性も否定できません。
以上までがお答えできる範囲かと思います。ご了承くださ。回復されることを願っております。
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