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飯塚病院呼吸器内科のブログ
by res81
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福岡県の飯塚病院呼吸器内科のブログです。

呼吸器内科スタッフ13名+呼吸器腫瘍内科スタッフ1名+専攻医4名+特任副院長1名(R5年4月現在)で、日々楽しく頑張っています。
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ERS2013出席中 & 喫煙関連肺疾患について ・・・

久しぶりのアップになります。
肺病理修行中のスタッフ228です。
実は今、スペインはバルセロナにて、ERS(ヨーロッパの呼吸器学会)
開催されており、飯塚呼吸器からも3人(後期研修医の先生も含みます
が出席しています!!
どうやら無事に発表も終わったようで〜(拍手!!)
きっと後期研修医の先生たちも素敵な経験ができたことでしょう。
引き続き飯塚から、世界に発信していきたいですね〜
それにしても、バルセロナいいなぁ・・・

さてさて、今日は「喫煙関連肺疾患」についてです。
まず、喫煙が原因で起こる肺の病気には、どんなものがあるでしょうか?
ちょっと列挙してみます。
もちろんCOPDだけではありません。

ERS2013出席中 & 喫煙関連肺疾患について ・・・_d0264356_2462537.png


あえて、COPDとはせず、
形態を表す「肺気腫」や症状を表す「慢性気管支炎」という言葉を用いたのは、
それ以外の病態において、どの程度COPD(閉塞性障害)がからんでいるか
よく分かっていないからです。
(COPDの定義は、あくまで「閉塞性障害=1秒率が70%未満」というもの
なので、いろんな喫煙関連肺疾患で起こりうるわけです)

次に、実際の臨床現場(治療介入)を考えてみると

ERS2013出席中 & 喫煙関連肺疾患について ・・・_d0264356_246454.png


臨床的に大事なポイント(治療に関わるところ)は、閉塞性障害があるか、
気道炎症がどの程度か、といったところかとは思いますが、
現在ぼくが肺病理勉強中ということもあり、
今回、喫煙が肺に及ぼす影響に関して、掘り下げてみることにした、
というわけです。
その病態に関してのキーワードは次の通りです。

ERS2013出席中 & 喫煙関連肺疾患について ・・・_d0264356_1855676.png


どこかで見たことがあるような図ですが、それはさておき、キーワードは3つ。
「気腫」、「炎症」そして「線維化」です。
これに違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。
それもそのはず、「気腫」と「線維化」がかぶっていますから!
一般的には、気腫の定義では、線維化を伴っていてはいけないはず・・・!?
そういう風に思っている方も多いと思います。
が、ここで、改めて「肺気腫」の定義を振り返ってみると、
"abnormal, permanent enlargement of airspaces distal to the terminal bronchioles, accompanied by destruction of their walls and without
obvious gross fibrosis"
(1985年のNIHの定義より)
となっています。
あくまでobviousな(明らかな)grossな(あふれるほどの)線維化が、withoutなわけです。
ちょっとした線維化はオッケーなんですねぇ
実際、気腫と線維化が合併することは以前からも認識はされていたようですが、
基本的には別の病態として考えられていたようです。
近年になり、特に病理界では、気腫と線維化に着目するようになり
(画像界ではCPFEが提唱され)、さまざまな用語、概念が
提唱されるようになったようです。

ERS2013出席中 & 喫煙関連肺疾患について ・・・_d0264356_145326.png

(Pathology International 2013; 63: 206–213より)

この図をみて分かるとおり、
これらの疾患は臨床的には、とても鑑別できそうもない・・・
もっと言うなら、病理学的にも困難なような・・・
オーバーラップしている部分も多いにあるような印象です。

ちなみに、ここで、喫煙による肺への影響がどのようなものか、
病理学的にみてみましょう。
「SRIF; Smoking Related Interstitial Fibrosis」を提唱している
Katzenstein先生のreviewから。
(J Clin Pathol Published Online First: /jclinpath-2012- 201338より )

ERS2013出席中 & 喫煙関連肺疾患について ・・・_d0264356_23684.png


ERS2013出席中 & 喫煙関連肺疾患について ・・・_d0264356_1461830.png


ちなみに、いわゆる肺気腫はこんな感じです。

ERS2013出席中 & 喫煙関連肺疾患について ・・・_d0264356_1464337.png


こういった病理学的特徴が挙げられており、
今後は、それらの病理所見と臨床所見、呼吸機能検査(COPDかどうか)、
胸部CT所見との検討が必要で、その上で疾患概念を整理することが理想です。

ただ、実際には、これらの喫煙関連肺疾患は、自覚症状が軽く、
急激に進行するわけでもないため、無治療経過観察も多く、
VATS(胸腔鏡補助下肺生検)を行う機会も少ないのが現状でもあります。
(実際、Katzenstein先生が「SRIF」を提唱した論文も、もともとは
 肺癌で切除した肺検体を利用し、その非癌病変を対象にしたものでした。
 Human Pathology (2010) 41, 316–325 )

さらに、喫煙関連といっても、一体どの程度を喫煙関連とするのか
(受動喫煙も含め)、明確な定義はありませんし、決めがたい、
という問題もあります。

簡単に「喫煙関連」と言っても、そもそもの定義付けから難しいんですねぇ
少しもやもやした感じが残りますが、
長くなってきましたので、そろそろ締めたいと思います。。。。

「喫煙関連肺疾患」・・・
いや、最後にきてなんですが、最後は「喫煙による肺への影響」という表現に留めます。
実は、喫煙というのは、
「病気というよりも、あくまで肺を悪くする要素のひとつにすぎない」
とする捉え方もあるからです。

ということで、

喫煙による肺への影響まとめ、そして今後・・・

☆キーワードは、気腫、炎症、線維化

☆病理学的には、気腫、隔壁の肥厚、肺胞内マクロファージ、平滑筋の増生
 ※ 病理学的に多数ある疾患概念を統一しようとする動きもあるようです。

☆今後は病理学的所見と臨床所見、検査所見(呼吸機能、CT)との比較検討が
 望ましいが、今後VATS症例を増やすことは現実的ではない
 ➡ むしろ、これらの病態ではVATSをしないでよいように、極力CTで病態を
  捉えられるように検討する動きもあるそうです。
 ➡ ですので、今後は、胸部CTで喫煙の影響っぽいパターン、ということが
  分かれば、あえてVATSまでは行わない、という時代になっていくかも
  しれません。

「喫煙関連肺疾患」の今後の動向に注目〜〜〜
 
 
  
 
by res81 | 2013-09-11 01:40 | COPD | Comments(0)
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