飯塚病院呼吸器内科のブログ
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抗結核薬を始めたら

こんにちは、こちらスタッフ228号、久しぶりの投稿になります。
新年度が始まって早一ヶ月、今年度は新メンバーも加わり新たな診療体制となり、新鮮な気持ちで日々全力疾走中です〜


さてさて、そんななか、結核性胸膜炎に対する抗結核薬で薬剤性肺障害を発症した疑いのある患者さんに出会いました。


医師として駆け出し早○年、呼吸器内科医としても○年が経ち、抗結核薬もそれなりに使用してきたつもりでしたが、多くの結核治療は近隣の結核病院に依頼しているため、小生「初期悪化」の経験はなく、ましてや抗結核薬による薬剤性肺障害を疑う患者さんは初めてでした。


そんなこんなで本日の臨床疑問は・・・


①そもそも抗結核薬で肺障害になる割合ってどれくらい?
②初期悪化との鑑別はできるの?
③薬剤性肺障害(あるいは初期悪化)に対してステロイドを使った場合、結核性胸膜炎は悪化する?


本日はこの3本をお送りします←サザエさん風(笑)


①そもそも抗結核薬で肺障害になる割合ってどれくらい?


さっそく調べてみましたが、INH(イソニアジド)やRFP(リファンピシン)でcase reportが散見される程度、EB(エタンブトール)でも一応ありました。どの論文でも「稀」と記載されており、正確な頻度は分かりませんが、頻度としてはかなり低いようです初期悪化との鑑別に悩んだけども、呼吸不全が進行したため、抗結核薬を休薬したところ改善した症例、休薬のみで改善せずステロイド投与を要した症例、なかには減感作で被疑薬も再投与可能だった症例も報告されています。


②初期悪化との鑑別は??


「初期悪化」とは、抗結核薬開始後に、結核に対する効果は得られている(喀痰中の結核菌は減少あるいは陰性化)にも関わらず、もともとの病変が悪化したり、新たな病変が出現したりする現象のことです。抗結核薬で急激に死滅した大量の結核菌の菌体に対する局所アレルギーによるとの考えが支持されています。そのため、もともとの病変周辺のみならず、病変から離れたところに出現することもあります。もともとあった病変(肺結核や結核性胸膜炎による胸水)が悪化するという経過であれば、初期悪化を疑いやすいですが、もともと肺病変がなかった(あるいは目立たなかった)患者さんに、新たな肺病変が出てきた場合、これは頻度が低いとはいえ、薬剤性肺障害を鑑別に入れざるをえませんし、その鑑別ってムズカシイですよね・・・今回の患者さんもまさにそういった状況でした。ちなみに、結核自体が悪化している可能性も、一応頭の片隅には入れておかねばなりません(特に薬剤耐性が多い国出身の患者さんなど)。


「初期悪化」と「薬剤性肺障害」に関して、既報をもとにまとめてみましたので、ご参考いただけたらと思います。

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現実的な対応としては、抗結核薬開始後に新たな陰影が出現した場合、呼吸状態を含む全身状態がそこまでひどくなければ抗結核薬を継続しながら慎重に経過観察を行い、それで悪くならなければ「初期悪化」と診断、悪くなるようなら「ひどめの初期悪化」もしくは「薬剤性肺障害」を念頭に、抗結核薬の中断、気管支鏡を行いステロイド導入を考慮する、といったところでしょうか。気管支鏡検査のタイミングがキーになるでしょうか。


③薬剤性肺障害(あるいは初期悪化)に対してステロイドを使った場合、結核性胸膜炎は悪化する?


結核とステロイド・・・


みなさんはどう思われるでしょうか?


ステロイド使ってたら免疫が落ちて、そりゃ結核のリスク上がるでしょ。だったら、結核性胸膜炎だって悪くなるでしょ!!


なんて声も聞こえてきそうですが、結核感染の重症例では、その治療の隠し味的に(主に症状緩和)、ステロイドを投与することがあったりします。ニューモシスチス肺炎のときに、菌体に対して激しく働きかけてる自身の免疫を抑えてあげるべく、ステロイドを投与することがありますが、そんなイメージです。また、米国CDCのガイドラインやUpToDateでは、心膜炎や髄膜炎など中枢神経系結核の場合にはステロイドの併用が推奨されています。胸膜炎に対しては推奨されていませんが、過去には、ステロイドで胸膜炎による自覚症状が軽減したり、胸水の再吸収が促進されたとする報告もあるようですので、薬剤性肺障害に対するステロイド治療が、結核性胸膜炎をいい具合に抑えてくれる可能性はあるかもしれません(もちろん結核治療の再開をどこかでしなければなりません)。


問題は、ステロイドで肺障害が落ち着いたとして、しばらくステロイドを継続していかねばならない状況のなかで、当初は肺外結核だったにも関わらず、経過中に肺結核を発症してしまう、つまり排菌してしまう可能性があることです。これはもう気をつけていくしかありません(T T) 細めに画像フォローを行いつつ、怪しければすぐに喀痰検査、怪しくなくとも定期的に喀痰検査をしておいたほうがよいかもしれません。


さて、臨床疑問を挙げてはみたものの、われながらモヤっとする答えだなぁと思うところも無きにしもあらずですが、今日はこの辺で。結核診療を多く経験されている先生方のご意見などいただけたら嬉しい限りです。。。。


参考:
【結核性胸膜炎、初期悪化】
  • UpToDate® “Tuberculous pleural effusion”
  • 肺病変の乏しい結核性胸膜炎の初期悪化 日呼吸誌 2014;3:116-120.

【INH肺障害】
  • 減感作で再投与可能だったINH肺障害 日呼吸会誌 2004;42:649-654.
  • INHで誘発されたHPパターンの肺障害 Respir Med Case Rep. 2016.18:78-80.

【RFP肺障害】
  • 結核 2011;86:473-476.
  • Thorax. 2002;57:1000-1001.
  • Intern Med. 2013;52:473-477.

【EB肺障害】
  • J Allergy Clin Immunol. 1997;100:712-713.



P.S.
いつもブログを応援してくださっているK先生、先日の呼吸器学会総会でお会いできて嬉しかったです。またお会いできるのを楽しみにしています〜☆




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by res81 | 2017-05-02 02:17 | 抗酸菌 | Comments(1)
Commented by k at 2017-05-12 01:25 x
228先生
先日は、久しぶりに皆さんにお会いできて、楽しかったです。肺結核については、以前結核病院で患者様の治療に多少従事したことがありますが、薬剤性肺障害の患者様は拝見しませんでした。初期増悪を疑う方はいましたが、呼吸状態が落ち着いていたので、そのまま治療を継続し、少しずつ肺結核が良くなっていった記憶がございます。肺結核・結核性胸膜炎に対してのステロイド治療については、私はできるかぎり避けたいと考えています。基本的には、抗結核薬で結核を弱らせることはできても、治療には宿主の免疫力が重要と思っています。
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