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飯塚病院呼吸器内科のブログ
by res81
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福岡県の飯塚病院呼吸器内科のブログです。

呼吸器内科スタッフ13名+呼吸器腫瘍内科スタッフ1名+専攻医4名+特任副院長1名(R5年4月現在)で、日々楽しく頑張っています。
大学の医局に関係なく、様々なバックグラウンドのドクターが集まっています。

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第15回東京びまん性肺疾患研究会を経て〜間質性肺炎つれづれ

どうも、スタッフ228号です!!
早起きが苦手なぼくですが、先週土曜日に早起きをがんばって(笑)朝一の飛行機で東京の研究会に参加してきました〜☆
いわゆる「東京びまん」です。この「びまん(間質性肺炎などびまん性肺疾患のこと)」の研究会は、全国各地でちらほら行われており、今回初めて東京びまんに参加させていただいたんですが、やっぱり東京はすごいですね!朝から夕まで、昼食のちょっとした休憩時間以外、延々と症例をみていき(約30症例)、日本のびまんのトップの先生方が繰り広げるアツいディスカッション・・!途中ぼーっとなってしまう瞬間がないわけではないですが(^_^;)おもしろかったです〜


さて、そんな今回のテーマは

「HRCTで蜂巣肺を認めないIPFにおける臨床画像病理診断」


特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)は、肺の構造が壊れてしまい、あたかも蜂の巣のような穴がぽこぽこと空いてしまう病気で、一般的には進行性と考えられており、時として急性増悪(感染症などを契機に急激に呼吸状態が悪化していまう状態)を来たすことが知られています。この蜂の巣構造=蜂巣肺(honeycomb)が、いわゆるUIP(Usual interstitial pneumonia)と呼ばれるパターンの特徴なわけですが、UIPパターンを来たす原因はいろいろとあり(リウマチなど膠原病、慢性過敏性肺臓炎、石綿肺など)、はっきりとした原因が分からない(=特発性)ものをIPFといいます。

第15回東京びまん性肺疾患研究会を経て〜間質性肺炎つれづれ_d0264356_02043050.png
※ 写真の蜂の巣は、佐賀大学の先輩で、今イギリスに留学中の江頭先生の自宅で採取された本物です、掲載の許可いただきました(笑)イギリスのスズメバチも、まさか自分の住処が、こんなところで公開されているとは夢にも思わなかったでしょう(笑)それにしても、本物の蜂の巣って、すごいきれいにできているんですねぇ


さて、蜂の巣構造が最初からあれば分かりやすいのですが、なにも最初から蜂の巣なわけではありません。それは、こちらの記事もチェック!!(自分が書いた記事ですけど何か?笑)この記事でも取り上げているのですが、CTで見ると、ちょっとしたすりガラス陰影なんですが、肺生検をして病理組織を見てみると、けっこう肺の構造が壊れていて線維化が進んでいて、顕微鏡的には蜂巣肺を呈していたりするんですね。ちょっとした陰影だど、まさか蜂巣肺だなんて認識されていないことがある、ということです。ただ!!こういう方が、先々進行していくのかというと・・・・それは必ずしもそうじゃないようなんです。一律の経過ではなく、いろんな経過があるんです〜


ということで、今回の東京びまんでは、4年前のこの会のときに、CTではっきりと蜂巣肺が分かるような典型的なIPFではなくて、すりガラス陰影やら網状影やらが主体で、肺生検を行って病理学的にも検討され(顕微鏡的蜂巣肺を含め)、臨床医と放射線科医と病理医とみんなで話し合った結果、これは現時点ではIPFの診断にしよう、といった症例約30例を対象に、その30例がその後どうなっていったかを、改めて検討する会だったのです!なかなかこんな機会はないぞと、がんばって早起きしたわけでした。


どんな経過をたどるのか、少し紹介したいと思います。


CTの変化としては、やっぱり数年の後、蜂巣肺が顕在化した群のほか、穴は穴でも、蜂の巣構造というより気管支が拡張した所見(牽引性気管支拡張)が主体な群や、何年経っても画像的にはあんまり変わらない群。また、典型的な蜂巣肺は、下葉背側(背中側)に多いわけですが、背中側ではなくて、頭側に目立って出てきたり。そして、なぜか背中側は、穴ではなく、すりガラス陰影が拡がっていたり(いわゆるNSIPパターンに類似)。さらには、蜂巣肺でも気管支拡張でもない嚢胞を伴っていたり。画像の経過は、とにかく多彩〜っ


そして、この病気の理解を難しくしているのが、CTの経過と臨床症状、経過、病理組織所見とが必ずしも相関しないということ。ある症例では、徐々に進んで最終的に急性増悪を来してしまったり、かと思ったら、頻回に急性増悪を来たすような活動性が高い症例があったり。病理所見からは活動性が高そうなのに、その後あまり進行せずに経過する症例があったり。。。。もっとより多くの症例が集まって検討されると、また何か見えてくるのかもしれませんが、現状では、とりあえず経時的に肺の構造が壊れていく人(蜂巣肺や気管支拡張や嚢胞などひっくるめて)は、やっぱり予後が悪そう、ということだけはたしかなようです。


どういう方々の肺が壊れていきやすいのか、まだまだ今後の課題ですね。


ちなみに、一度急性増悪を来たしてしまうと、その後も繰り返しやすく、予後に影響してしまいます。COPDの急性増悪と同じような感じですね。急性増悪を来たしやすい群を、より早めに見つけること、これもまた課題です。


とにかくIPFという病気の多様性、奥深さを実感した会でした。どこまでをIPFとするのか(IPFの亜型とするのか)、はたまたIPFと別の疾患とするのか。ひとまず、現状ではIPFの診断閾値を低くしておいて、なるべくIPFとして治療(抗線維化薬やアンジオキナーゼ阻害薬など)や臨床試験に参加できる機会を増やす、そうして得られたデータをもとに、疾患概念を再構成していくことが重要なように思われます。特に日本では、CTが日常的に頻繁にとられることもあり、症状が乏しいかなり早期の時点で間質性肺炎が見つかることが多いようです。間質性肺炎がどういう風に進行していくのか、どういう人にどういう治療を選択していったほうがよいのか、日本から発信できるかもしれません。


と、言うは易し、行うは難しー


早期に間質性肺炎が見つかっても、自覚症状が乏しいと、通院すら続かない現状があります。また、巷では、間質性肺炎はどうせ治らない病気だから、ということで放置されていたり、結局ステロイドしかないでしょ、ということでなんとなくステロイドが始まってしまったりすることもあるようです。ぼくたち呼吸器内科医も、早期の間質性肺炎に、症状が乏しいのに治療するの?けっこう治療費かかるよ!という現実的な問題にも直面するわけで・・・


この領域、まだまだ課題が多い分野です。「間質性肺炎」という病気を世の中にもっと周知させて、治療や臨床試験を、なるべく多くの患者さんが受けることができるように、そんな体制が作れればと思います。


以上、一般呼吸器内科医の独り言でした!!
長々と読んでくださった方、ありがとうございます。何かご意見やアドバイスなどあれば、お願いします〜


そういえば今週末は福岡びまん!!びまん尽くしです・・・笑






by res81 | 2014-10-20 02:26 | 間質性肺炎 | Comments(0)
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