人気ブログランキング | 話題のタグを見る

飯塚病院呼吸器内科のブログ
by res81
お知らせ
福岡県の飯塚病院呼吸器内科のブログです。

呼吸器内科スタッフ13名+呼吸器腫瘍内科スタッフ1名+専攻医4名+特任副院長1名(R5年4月現在)で、日々楽しく頑張っています。
大学の医局に関係なく、様々なバックグラウンドのドクターが集まっています。

飯塚病院呼吸器内科では、専攻医やスタッフを募集しています。ご興味のある方は
ktobinoh2@aih-net.comまでご連絡ください。

お勧めブログ
飯塚病院血液内科ブログ
カテゴリ
全体
科の紹介
学会・研修会
身体所見
画像診断
気管支鏡
COPD
喘息
肺炎
抗酸菌
肺癌
間質性肺炎
咳嗽
胸水
胸膜癒着術
中皮腫
じん肺
真菌症
気管支拡張症
膠原病
病理学
感染症
アレルギー
肺高血圧症
写真部
Pearl
ジャーナルパトロール
統計
気胸
症例
COVID-19
こきゅうの歩き方
未分類
記事ランキング
検索
最新のコメント
> kuronoさん ..
by res81 at 13:29
> kuronoさん ..
by res81 at 13:26
透析患者など、頻回に中心..
by kurono at 14:58
同様なケースを経験しまし..
by kurono at 14:56
RAの肺疾患について非常..
by Jake at 16:35
先生、ポスターもブログも..
by Y@いいづか at 10:55
APSRのセッション、ポ..
by つぎとみ@せいろか at 21:09
228先生 先日は、久..
by k at 01:25
横山様 コメントありが..
by res81 at 17:47
こんにちは。咳のことを検..
by 横山 at 13:50
タグ
フォロー中のブログ
最新のトラックバック
外部リンク
ファン
ブログジャンル
画像一覧


臨床と病理の架け橋シリーズ③ ACIFまとめました。

大変ご無沙汰しております。


スタッフ228号、またの名を社会人大学院生228号です。


実はこの10月より、勤務中の飯塚病院の許可をいただき、大学院生をさせていただいている長崎大学病院病理診断科で、短期研修に来させていただいています。今回は研修もさることながら、長大病理の皆さんのご指導のもと、研究プロジェクトを遂行し何とか形にすることが主な目的であります!!この間、ぼくの患者さんの対応を快く引き受けていただいている飯塚のスタッフの皆さんには、ほんともう感謝してもし尽くせません。素敵なスタッフに恵まれているなと痛感しています。今度お土産持って帰りますから・・・笑


さて、前置きが長くなりましたが、この研修期間を利用して、長らく途絶えていたシリーズを復活させることにしました。と言っても、まだ③回目(笑) ぼちぼち続けていきたいと思いますので、みなさん、どうぞよろしくお願いします。


ということで、本日のテーマはずばり「ACIF(そのままエーシーアイエフと呼びます)」について。


ご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、呼吸器専門以外の先生や呼吸器かけだしの先生、びまん性肺疾患が専門ではない先生を対象に記事を書いていますので、あしからず。


ACIFとは「Airway-centered interstitial fibrosis」の略になります。つまり、気道周辺の間質を主体に線維化を来たす病気、ということになります。実はこの病気、まだ疾患概念が確立されていません。ACIFという病理学的な表現がされていることからもお分かりのとおり、あくまでこういう病理組織所見を呈す疾患がありそうだ、ということで、びまん性肺疾患の領域で最近よく耳にする用語なんです。


その始まりは2002年ー


Yousem先生らが発表した「Bronchiolocentric interstitial pneumonia」に始まります。いやいやACIFじゃないじゃん!っていうツッコミが聞こえてきそうですが、流させてください(笑)。


ちょうど時を同じく、特発性間質性肺炎のnovelな組織パターンとして「Centrilobular fibrosis」という名のもとに、気道周辺の線維化病変を来した患者さんのcase reportも報告されています。


そして、2004年に、Churg先生らが「Airway-centered interstitial fibrosis」として報告しています。やっとここで、ACIFが出てきました(笑)


この頃から気道周辺の間質を主体とした線維化を来たす疾患群のcase reportがパラパラと報告されだし、2005年には、今まさに長大病理でご指導いただいている福岡先生が「peribronchiolar metaplasia」通称「PBM」を報告されています。


このような報告を受け、2013年の特発性間質性肺炎のガイドラインでは、Rare histologic patternとして、つまり、まだ確立した病名としてではなく、あくまで病理組織パターンのひとつとして「Bronchiolocentric patterns of interstitial pneumonia」という項目のなかで、この病態が紹介されています。


直近では、本年2016年のChest誌に「Airway-centered fibroelastosis」として5例報告がなされています。よく見てくださいね、ACIFとは微妙に異なりますから。ACFEと言うんでしょうか?笑 呼び方はさておき、この報告では、elastosis、つまり弾性線維の増生が強調されて報告されています。そして、どちらかというと急性の経過を呈していたようです。


そんなこんなで、気道周囲の間質を主体とした線維化病変は、いろいろな用語で表現されており、この領域に縁がない人だと、やっぱり混乱してしまうかもしれません。ただ基本的には、みている病態はほとんど同じもので、表現型や評価者の捉え方が少し異なるだけのような気もします。ひとまずこういう疾患概念が、いま確立されていこうとしているのだな、ということを知っていればいいのではないでしょうか。

臨床と病理の架け橋シリーズ③ ACIFまとめました。_d0264356_19151121.png


ちなみに、ぼくが今回主にACIFという用語を使っているのは、今お世話になっている長大グループでよくこの用語が使用されているからです。


さて、気になるのは臨床像ですが、どうやら中年の女性に多い傾向があるようです。喫煙者が多いわけではないですが、原因として、過敏性肺炎(粉塵やカビなど吸入抗原の影響)や逆流性食道炎による誤嚥の影響が疑われたたり、膠原病(膠原病に関連した気道病変)や喘息を基礎疾患にもつ方もいるようで、なるほど、この辺は気道周辺の病態ということで納得です。ただ、はっきりとした原因を同定しえないこともあり、idiopathic(特発性)と表現せざるを得ないこともあります。参考文献7をもとに、この病態のetiologyを表現してみました(↓↓)。

臨床と病理の架け橋シリーズ③ ACIFまとめました。_d0264356_231055.png


ちなみに、上甲先生が執筆された論文もおすすめしたいひとつです(参考文献8)。rareな間質性肺炎のきれいな画像と病理像が提示してあります。ACIFのところを参照させていただきました。PBM-ILDや他の写真もぜひご参考ください。

臨床と病理の架け橋シリーズ③ ACIFまとめました。_d0264356_23104679.png


そもそも病理学という学問は、病気の現場を直接観察することができるという、特に臨床一筋でやってきた自分にとっては、なるほどこういうことが起きているのかと気付きを与えてくれる、何とも興味深い(学生のときはあまり気づきませんでしたが・・・笑)学問です。やはり事件は現場で起きていますから、現場検証って大事ですよね!ただ一方で、見えすぎてしまうがゆえに、いろんな病名が提唱され、結果臨床に混乱をもたらす側面があるのもまた事実かと思います。臨床的には似通った病態であったり、そもそも病気とするほどでない変化に関してまで、病理学的観点からいろいろな呼び方がされることがあるからです。今回取り上げたACIFもそういった側面がないわけではありませんが、この病態に関しては、今後近いうちに、ひとつの疾患として確立されていくであろうことを見越して、今回のテーマに取り上げてみました。


そういえば、自分の担当患者さんで、喘息と言われたことがあり、上肺野優位の気道病変を主体とした間質陰影が強い、ややご年配の女性患者さんがいらっしゃいます。夏型過敏性肺炎で知られるトリコスポロンアサヒ抗体が陽性ですが、夏よりも冬場のほうが調子が悪くなることが多いということで、できる限りの抗原隔離と喘息治療を行いながら経過をみていますが、もしかしたらACIFが進展した病態をみているのかもしれません。


みなさんの患者さんのなかにも、もしかしたらこういった病態の患者さんがいらっしゃるかもしれません。この病態が分かったからといって、線維化した肺を元に戻すことができるわけではありませんが、そういった患者さんのなかには、過敏性肺炎(職業歴や居住環境の確認が大事!)や逆流性食道炎、膠原病や喘息が潜んでいる可能性があり、それに対して介入を行うことで、肺の線維化の進行を予防することに繋げられるかもしれません。場合によっては、喘息と思っている患者さんのなかに、この病態の方が隠れているかもしれません(実は喘息でなかったという・・・)。そういう意味でも、この病気のことを、ぜひぜひ知っておいてほしいなと思う今日この頃です。


参考文献:
1. Yousem SA, Dacic S. Idiopathic bronchiolocentric interstitial pneumonia. Mod Pathol. 2002;15:1148-5.
2. de Carvalho ME, Kairalla RA, Capelozzi VL, et al. Centrilobular fibrosis: a novel histological pattern of idiopathic interstitial pneumonia. Pathol Res Pract. 2002;198:577-83.
3. Churg A, Myers J, et al. Airway-centered interstitial fibrosis: a distinct form of aggressive diffuse lung disease. Am J Surg Pathol. 2004;28:62-8.
4. Fukuoka J, Tranks TJ, et al. Peribronchiolar metaplasia: a common histologic lesion in diffuse lung disease and a rare cause of interstitial lung disease: clfinicopathologic features of 15 cases. Am J Surg Pathol. 2005;29:948-54.
5. William D Travis, Ulrich Costabel, et al. An official American Thoracic Society/European Respiratory Society Statement: Update of the International Multidisciplinary Classification of the Idiopathic Interstitial Pneumonias. Am J Respir Crit Care Med 2013;188:733-748.
6. Pauline Pradere, Clement Gauvain, et al. Airway-Centered Fibroelastosis. A Distinct Entity. Chest. 2016;149:767-774.
7. Lilian Tiemi Kuranishi, Kevin O Leslie, et al. Airway-centered interstitial fibrosis: etiology, clinical findings and prognosis. Respir Res. 2015;16:55.
8. Johkoh T, Fukuoka J, Tanaka T. Rare idiopathic interstitial pneumonia (IIPs) and histologic patterns in new ATS/ERS multidisciplinary classification of IIPs. Eur J Radiol. 2015;84:542-6.
by res81 | 2016-10-29 23:17 | 間質性肺炎 | Comments(0)
<< Pembrolizumab 学会報告 CHEST@Los ... >>