飯塚病院呼吸器内科のブログ
by res81 お知らせ
福岡県の飯塚病院呼吸器内科のブログです。
呼吸器内科スタッフ13名+呼吸器腫瘍内科スタッフ1名+専攻医4名+特任副院長1名(R5年4月現在)で、日々楽しく頑張っています。 大学の医局に関係なく、様々なバックグラウンドのドクターが集まっています。 飯塚病院呼吸器内科では、専攻医やスタッフを募集しています。ご興味のある方はktobinoh2@aih-net.comまでご連絡ください。 お勧めブログ 飯塚病院血液内科ブログ カテゴリ
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Allostasis
スタッフのTBです。
年末進行のため、先週より兵庫医科大学、京都大学、長崎大学、名古屋、横浜と出張尽くしです。 体も頭もクタクタですが、全てが得難い素晴らしい機会で、やる気だけは十分チャージできました。 (写真は横浜のホテルからの景色) さて、タイトルの"Allostasis"、皆さんはお耳にされたことがおありでしょうか? 名古屋での呼吸生理に関する研究会で、名古屋市立大学の早野順一郎先生のお話をお伺いすることができました。主に循環器分野のお話でしたが、非常にエキサイティングな内容でした。 --------------------------------------------------------------------- <心電図のR-R間隔> ・心拍数が正常範囲の場合は、RR間隔は揺らぎが生じる ➤呼吸による揺らぎが主で、「吸気時に頻脈、呼気時に徐脈」となる これは100年以上前から知られている現象で、 呼吸性洞性不整脈(Respiratory sinus arrhythmia:RSA)と呼ぶ ・心拍が速くなるとRR間隔は一定になる:RSAはほぼなくなる ・様々な状況における検討 健常者・安静時:RR間隔≒1000±200msec(mean±SD) メンタルストレス:RR間隔≒750±50msec 運動時:RR間隔≒650±50msec 心不全:RR間隔≒550±10msec ・冠動脈狭窄 なし、1本、2本、3本の順で、RSAがなくなる Circuation 1990;81:1217 ・心筋梗塞患者でホルター心電図のRR間隔の揺らぎ(SD)が小さいほど死亡率が高い Am J Cardiol 1987;59:256 ➤つまり、呼吸によるRR間隔の揺らぎが大きい方が正常! <HomeostasisとAllostasis> ・Homeostasis Bernald 1865, Cannon 1932 ”生体は恒常性を保つために、 内部環境のすべての指標を一定に保たなければならない” ・Allostasis Peter Starling and Joseph Eyer 1988 ”生体は恒常性を保つために、内部環境のすべての指標を変化させて、 環境からの要求に適切に対応しなければならない” ➤Allostasisの観点に立ち、健康の定義と治療の概念を変える必要がある <呼吸性洞性不整脈(Respiratory sinus arrhythmia:RSA)の意義> ・吸気時に脈が速くなり、呼気時に遅くなる現象 ・意義:生理学的には、ガス交換における換気・血流の効率化に役立つ 吸気時に心拍を早くした方がガス交換が効率的! ➤犬の実験で証明 Circulation 1996;94:842 ・調節部位:延髄の背側核と疑核でコントロールされる 猫では、疑核は胎生期に背側核から分離して移動する 魚類はエラ呼吸であり、疑核はない 両生類では、オタマジャクシ(=エラ呼吸)のころは疑核がなく、 カエル(肺呼吸)になると疑核ができる! <CVHR> ・SAS患者では、急激にRR間隔が変化する いったん呼吸が止まり徐脈→再開する際に急に頻脈になる現象 =この現象をCyclic variation of Heart Rate(CVHR)と呼ぶ Guillminault 1984 ・ACATというプログラムで自動検出すると、 CVHRの頻度(Fcv)はAHIと非常に良い相関があり、 CPAP治療で改善が認められた ・患者さんの中に、CVHRが鈍化している人がいる =呼吸再開時の頻脈の程度・時間が短い =適切な生体反応ができていない可能性がある これを定量化(加算平均法によるCVHRの平均振幅=Acv)し、 心筋梗塞後の患者さんなどで計測 ➤Acvが低い=CVHRが鈍化=適切な生体反応ができていない人は、 予後が悪かった Fcv(≒AHI)は統計学的に独立した予後因子とならなかった ➤CVHR時に、脈拍の揺らぎが大きい方が予後が良い ----------------------------------------------------------------------- Allostasisを維持するという事は、何か問題が起こった際に様々な系統から対応ができる、という事のようです。言い換えれば、「一つの経路のみで維持される状態は非常に危険」という事で、人体だけでなく、様々な日常の事柄に置き換えることができますよね。”遊びがある状態”というのは非常に重要なのです! 呼吸器疾患でも何か応用できないか、検討してみたいと思います。
by res81
| 2016-12-18 10:40
| 学会・研修会
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