飯塚病院呼吸器内科のブログ
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福岡県の飯塚病院呼吸器内科のブログです。

呼吸器内科スタッフ10名+呼吸器腫瘍内科スタッフ1名+後期研修医3名(H30年4月現在)+特任副院長1名で、日々楽しく頑張っています。
大学の医局に関係なく、様々なバックグラウンドのドクターが集まっています。

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カテゴリ:胸膜癒着術( 2 )

悪性胸水を思う 2018

スタッフ228号、久しぶりの登場です。


思い起こせば、このブログをTB先生と開設した当時、目的はもちろん当科の宣伝が第一ではありましたが、日常臨床で悩ましい事象に遭遇した際に、このブログの記事が少しでも役に立てば・・・そんな思いもありました。


ということで、久しぶりに勉強ネタを少し。抄読会のネタから(当院では毎週金曜日に呼吸器外科との合同カンファレンスの際に抄読会を行っています)。


テーマは「悪性胸水 (癌性胸膜炎)」


その昔、悪性胸水に対して、われわれは胸腔ドレーンを挿入し胸膜癒着術(胸腔内に薬液を注入し炎症を惹起させ、胸壁と肺とを引っ付けることで胸水をたまりにくくする治療)を行うしか術がありませんでした。


しかし、近年では、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)分子標的薬が開発され、薬の効果で胸水をたまりにくくする術を手に入れることができました。


それでも薬液だけでは完全に胸水をコントロールできないこともあり、結局あとあと胸膜癒着術を行うことがあるわけですが、長い期間胸水がたまっていると、胸水を抜いたあとも肺が膨らまないことが起こりえます。肺の膨らみが悪ければ、胸膜癒着術はほぼ無力です…こんなことなら、やっぱり初めから胸膜癒着術を施行しておけばよかった…いや、でも癒着術は痛みを伴うことも多いし…むむむ…


そんな悩ましき悪性胸水。

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そこで、この機会に自分なりにまとめてみました。あくまで私見ですので悪しからず。

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一見すっきりしているように見えるかもしれませんが、じつは最初の判断が一番悩ましいのです。どれくらい速いスピードなら、すぐに胸腔ドレーンを挿入して胸膜癒着術を行うべきか。具体的に少し考えてみました。


・胸水貯留による呼吸不全で救急搬送された初診の患者さん(救急要請するほどの呼吸のきつさ)


・最初に胸水穿刺をして、ある程度排液を行って、胸水の検査結果を待っていたり他の検査を行っている1-2週間の間に再貯留してしまい呼吸困難を生じる患者さん


一方で、EGFR-TKIや分子標的薬の適応が判明した場合(癌の組織診断と遺伝子検査が必須)には、少々胸水が再貯留しようとも、これらの薬を早めに導入し、必要に応じて穿刺排液を行いながら薬を継続する治療も考えられます。ただ、薬の効果を期待しすぎて、穿刺排液を行いながら粘りすぎないように気をつけなければなりません。先にも書きましたが、粘りすぎて、結果的に胸水の貯留期間が長くなり、肺の拡張が得られがたくなってしまうことは、できれば避けたいところです。


じつはこの図のポイントは「EGFR-TKIを使用しているときに胸膜癒着を考えた際は、一旦休薬しましょう」という点にもあります。


癒着術前後のEGFR-TKIは、どうやらARDS(急性呼吸窮迫症候群)を含む肺障害を起こしやすくするリスク因子のようなのです。愛知医科大学さんからの論文を読ませていただきました。癒着後にEGFR-TKIを再開する場合も、癒着から一ヶ月程度は間隔を空けて再開するほうがよさそうです。論文では対象患者さんは、OK-432で癒着された方々ですが、Talkでも同様の注意が必要かと思います。


なお、悪性胸膜中皮腫を疑う患者さんにおいては、別個で考えたほうがよいです。胸水穿刺部位やドレーン挿入部への播種の問題がありますので、内科的にはできる限り穿刺は最小限に控え、早めに呼吸器外科と相談しながら治療方針を検討すべきかと思います。

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癒着剤の使い分けに関しては、どうでしょうか。
当院でよく使用する薬液に関してまとめています。

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Talk(ユニタルク®)OK-432(ピシバニール®)が用いられることが多いかと思いますが、基本的に間質性肺炎がある(あるいはありそうな)方には、Talkは避けたいところです(添付文書上は「慎重投与」です)。


胸腔鏡下の胸膜生検後もTalkは避けたほうがよいです。Talkが生検した部分から吸収され全身に影響を及ぼす可能性があるからです。じつは個人的には、以前一例だけ、胸膜生検後にOK-432で胸膜癒着術を行ったあとにARDSを来した症例を経験したことがあります。ですので、OK-432なら大丈夫かというと絶対そうともいえないなと、やはり癒着術を行う以上、ARDSなど肺障害の注意は必要かと思います(特にもともと間質性肺炎があったり、胸膜生検後では、たとえOK-432でも)。


そんなこんなで、悪性胸水に想いを馳せてみました、2018年2月。どの医療分野もそうかと思いますが、医療はすさまじい勢いで成長しており、新たな薬剤がどんどん登場しています。今後胸水に対しての治療の考え方も変わってくるかもしれませんので、本記事はあくまで暫定的なもの、2018年2月時点です。今後はまた適宜更新したいと思います。そういえば、免疫チェックポイント阻害薬の胸水に対する効果はどうなんでしょう…うっ早速また調べてみます…エンドレス(笑)



参考資料:
UpToDate「Management of malignant pleural effusions」
DynaMed「Pleural effusion」
Intern Med 2017;56:1791-1797.
 → 参考にさせていただいた愛知医科大学さんの論文
Lancet Oncol 2014;15:1236-1244.
 → EGFR-TKIのエルロチニブ(タルセバ®)と抗VEGFモノクローナル抗体のベバシ
 ズマブ(アバスチン®)の併用療法の有用性を示したPase II トライアル(JO25567)。
 このトライアルのサブグループ解析で、エルロチニブとベバシズマブの併用療法
 が、悪性胸水(ならびに心嚢水)貯留症例で、無増悪期間がより延長されることが
 示されました。
中外製薬のパンフレット「胸水コントロールの意義」
 → 癒着術やベバシズマブ併用化学療法における胸水コントロール率に関してま
 とめてあります。
Chest 2014;146:557-562.
 → 留置カテーテルをつたって播種・転移が起こりえます(特に悪性胸膜中皮腫)。
日呼誌 2011;49:981-985.
 → 原発性滲出性リンパ腫による胸水コントロールにステロイドが有効でした。




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by res81 | 2018-02-12 16:52 | 胸膜癒着術 | Comments(0)

ピシバニールで肺障害? & ピシバニールと中皮腫

スタッフ228です。
本格的に寒くなってきましたが、みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
もともと朝が苦手な上に、こうも寒いとさらに朝起きるのが辛くなってきますが、気合いでがんばります(笑)

さて、先日、胸膜癒着療法に使用する薬剤として、日常的によく使用するOK-432(ピシバニール)による肺障害を来たした症例を経験しました。ピシバニールによる発熱などは有名ですが、小生、その肺障害は経験がなく、実際どんなものかと調べるに至りました。

すると、ありました!!

ピシバニール後の間質性肺炎。一例報告から数例報告、中には投与対側にOP(器質化肺炎)を来たしたという報告もありました。ちなみに、アナフィラキシーを来たした症例報告もありました(たしかTB先生もご経験ありとのことでした)。
それらの中でも興味深かったのは、だいぶ前になりますが、

分子呼吸器病 1997;1:187-194.

に記載されている症例報告とその考察です。

ピシバニールが生体内で作用する場合に、好中球、マクロファージ、Th細胞、NK細胞などに連続的に働き、多種のサイトカインを誘導する作用が知られているようです(つまり、免疫賦活剤ということですね)。一方で、間質性肺炎のその発症機序においても、特にその早期の段階で、やはり多種のサイトカインが関わっている可能性が考えられており、それらのサイトカインがピシバニールによって誘導されるサイトカインと共通しているため、ピシバニールの投与により、当然間質性肺炎は起こりえるだろう、との考察でした。
ただ、小生もそうだったように、ピシバニールの副作用としての間質性肺炎は、案外認識が薄いようです。その背景には、ピシバニールによる癒着を行うような方は、抗癌剤やG-CSF製剤の投与、あるいは肺切除などが行われていることも多く、間質性肺炎が起きた場合に、本当にピシバニールによるものなのか、明確に関連づけることが難しい、という点があるようです。

なるほどなるほど・・・・
そして、改めて、今回の症例を振りかえると・・・

悪性胸膜中皮腫の方で、その診断目的に胸腔鏡検査を行った後、ドレーンを挿入している間に、胸水コントロールにピシバニールで胸膜癒着を行った、という方でした。実は、入院当初から非常に炎症反応が高く、短期間で全身性に消耗している印象がありました。

そう、炎症です・・・・

そこで、思いました。全身性の炎症が高い状況下に、ピシバニールを投与したことで、さらに炎症が惹起され、結果、間質性肺炎を来たしたのではないか、と。

あくまで私見ですが、悪性中皮腫は、いわゆる炎症反応が高値であることも多いため、そういった症例では、ピシバニールの使用は控えた方がよいのかもしれません。肺癌を含むその他の癌による癌性胸膜炎で炎症反応が高いときもそうなのかもしれません。

中皮腫に関連して、見つけたのがこちらです。

Incidence of interstitial lung disease in patients with mesothelioma in the west part of Japan
pharmacoepidemiology and drug safety 2011; 20: 643–652


背景として、そもそも日本人において、癌治療に関連したびまん性肺疾患(ILD)の頻度が高いこと、そして、悪性中皮腫は、炎症反応が高いことが多く、その炎症に関わる機構が、ILDに関連しているかもしれないことが挙げられており、実際に中皮腫に対する各種治療(外科切除、化学療法、放射線療法、ピシバニールや抗癌剤による胸膜癒着療法)に関連したILD事象に関して検討してあります。

ILDを来たした症例を一部まとめると、

・70歳以上は、60歳未満の4-5倍ILDを発症している
・臨床病期III-VI期と進行期では頻度が多い
・PS;Performance Statusが3の群で頻度が多い
 (PS4症例ではILDはみられなかった)
・過去にILDのhistoryがあると、ない場合に比し5倍ILDを発症している
・喫煙や過去の石綿曝露歴はILD発現と関連しなかった


といった傾向があるようです。

また、胸膜癒着術を施行した症例に焦点をあわせると、ILDを来たした症例はすべてピシバニールで癒着されています(症例数自体は、ピシバニールと抗癌剤などその他の薬剤でほぼ同数です)。
他にも、外科切除と抗癌剤の中でも特にVinorelbineにおいて、ILD発現頻度が高い傾向にあったようです。

やはり、ピシバニールはILDを誘発しうるんでしょうね。他にも、ここ最近は、よかれと思って施した治療で、頻度の少ない合併症を来たす、といった症例がちらほらありました。こういった症例を経験すると、治療や検査は、個々の症例に応じて十分に検討すべきだな、ということを身にしみて感じます。



************** 追 記 ****************


以前質問欄にもコメントいただいた件とも関連があるので、一言追記を。。。

ピシバニールが承認、販売されているのは、日本・韓国・台湾の3カ国だけです!

ご存知の方からすれば、別に大したことない情報ですし、インターネットで「ピシバニール」と検索すれば、3カ国という情報もすぐ手に入るわけですが、知らないとPubMedなんかで検索してて、なかなか引っ掛からないなぁとモヤモヤしてしまったりします。
ええ、自分がそうでした。。。。(T T)

この記事、比較的読んでいただいているようですので、記事を書いた者として、ちょっと追記させていただきました。






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by res81 | 2012-11-28 01:54 | 胸膜癒着術 | Comments(2)