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飯塚病院呼吸器内科のブログ
by res81
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福岡県の飯塚病院呼吸器内科のブログです。

呼吸器内科スタッフ13名+呼吸器腫瘍内科スタッフ1名+専攻医4名+特任副院長1名(R5年4月現在)で、日々楽しく頑張っています。
大学の医局に関係なく、様々なバックグラウンドのドクターが集まっています。

飯塚病院呼吸器内科では、専攻医やスタッフを募集しています。ご興味のある方は
ktobinoh2@aih-net.comまでご連絡ください。

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COPDと嚥下障害 ~学位審査とこれからについてのご報告~

こんばんは、ご無沙汰しておりますスタッフYです。随分冷え込むようになりましたが、皆様どんな年の瀬をお過ごしでしょうか。私は先日、博士号を取得するための学位審査を受けてきましたので、その報告も兼ねて書かせていただきます。


COPDと嚥下障害 ~学位審査とこれからについてのご報告~_d0264356_18181382.jpeg


飯塚へ来た5年9ヶ月前、誤嚥性肺炎についてもっと知りたい、臨床につながるような研究がしたいという思いだけはあるものの、知識も経験もないままでした。臨床では院内の各科の方々に、研究ではTB部長にご指導いただき、少しずつ、学んでいきました。なかでも、COPDにおける嚥下障害のコホート研究は特別、科内でも協力をしていただいたおかげで続けて来れましたので、ご紹介させてください。


COPDでは、嚥下障害を合併しやすいことが分かっています。理由としては、加齢や喫煙などの患者背景や、逆流性食道炎や睡眠時無呼吸症候群などCOPDに合併しやすい疾患の影響に加えて、呼吸と嚥下の協調性も関わっています(これについては後にご説明します)。嚥下障害があると、COPD増悪や肺炎の原因になり、予後にも影響してしまうため、早めに嚥下障害を見つけることが重要です。けれど、どんな評価をすればCOPD増悪と関連するのか、これまで分かっていませんでした。COPDが重症になってから嚥下障害が出るかといえば、そうでもなく、COPD自体は軽症でも嚥下障害を伴うため、早期からの嚥下評価が必要であることがこれまでも指摘されてきました。


そこで、当科ではCOPDの患者さんに外来で嚥下障害のスクリーニング検査を行い、どの結果とCOPD増悪が関連するのかを観察してきました。後方視的研究およびその後の前向き研究から、反復唾液嚥下テストがCOPD増悪を予測することがわかりました。

Repetitive saliva swallowing test and water swallowing test may identify a COPD phenotype at high risk of exacerbation


反復唾液嚥下テストは、30秒間に唾液を何回飲めるか(空嚥下を何回できるか)回数をみるという、どこででも道具なく行える検査法です。当科のコホートでは、30秒間に6回以上嚥下できた患者さんでは、その後、有意に増悪を来しにくく、また中等症以上の増悪は一度も起こしませんでした

Repetitive Saliva Swallowing Test Predicts COPD Exacerbation

なんとこの予測精度は、(現在まで最適とされている)過去1年間のCOPD増悪よりも、高かったのです。単施設の、数も限られた研究ではありますが、次につながるものになればという思いでおります。


次いで、より詳しく調べるために、呼吸と嚥下の協調性について調べることとしました。


さて、突然ですが、皆さまは、息を吸っているときと吐いているとき、どちらにごっくんと飲み込んでいますか?実は、健常者の9割ほどは、呼気中に呼吸が停止し(嚥下時無呼吸)、嚥下が起こり、その後また呼気が再開するとされています。しかし、COPDやパーキンソン病があると、これがずれてしまい、吸気中に嚥下が起こったり、嚥下後に吸気が起こってしまったりすることが、通常の2倍ほどに増えます。すると、咽頭に残留したものを誤嚥しやすくなると考えられます。


兵庫医科大学生理学生体機能部門教授の越久仁敬先生が、摂食嚥下リハビリテーション学会でこのことを解明するためのご研究について講演されているのを拝聴し、同学会でご相談したのが、始まりでした。その後、タイで開催されたAPSR(アジア太平洋呼吸器学会)でさらに議論が深まり、共同研究をさせていただけることとなりました。


越久先生が開発されている呼吸嚥下モニターを当科で使わせていただき、前向き研究を行いました。これまでリスク因子であるとされていた「吸気―嚥下」パターンおよび「嚥下―吸気」パターンを、今回はひとまとめではなく、分けて解析をすることとしました。すると、「吸気-嚥下」パターンは、むしろ気道防御機構である可能性が導き出されました。とくに、(固形物の嚥下とは異なり)水分を嚥下する際には、気道防御機構が働きやすいので、何度も飲水をしてもらった今回の研究では、こういった結果が表れやすかったのではないかと考えます。

Breathing–Swallowing Discoordination and Inefficiency of an Airway Protective Mechanism Puts Patients at Risk of COPD Exacerbation


皆さまも、さあ潜水しようというときには、息を大きく吸い込んでから潜ると思います。ビールを一気飲みするときもそうですね。水を少々飲むときには、そこまで息を大きく吸って準備をすることは通常しません。けれど、呼吸予備能の低下したCOPDの患者さんでは、嚥下時無呼吸という一瞬の呼吸停止でさえ、事前に息を大きく吸い込んで準備をしておく必要があるのかもしれません。とくにCOPDでは、嚥下の咽頭期に時間を要する(嚥下時無呼吸が長くなる)ため、なおさら、嚥下前に吸っておかないと、嚥下途中に苦しくなってしまうのでしょう。


(学位審査の結果はまだですが)博士論文では、こんなことを報告させていただきました。また現在、こうした嚥下機能の低下したCOPD患者さんへの介入研究についても、論文を投稿中です。


研究について全く分からない状態だった私がこうした一連のコホート研究を経験できたのは、すべての段階において導き、ご指導くださったTB部長のおかげにほかなりません。また、科内の先生方にもいつも相談に乗ってもらい、症例登録や嚥下評価にも協力いただいていました。看護師さん、秘書さんたちも含め、呼吸器内家が総出で取り組みました。これは研究だけでなく、日々の診療や、難しい症例の対応、コロナ対策など、何においても、科内の前のめりな協力体制と絆を感じます。


またとないこの環境に、さあこれから恩返しをしていきたいと思っていたところではあるのですが、このたび、念願のイギリス留学をさせていただくこととなりました。コロナ禍に、自国での診療から離れることには心情も複雑ですが、呼吸器学会から留学助成金も頂戴することとなり、身が引き締まる思いです。長年の夢に挑戦する勇気と、あたたかい送別のお言葉も頂戴し、心より御礼申し上げます。


さて、私自身は遠くはなりますが、飯塚病院呼吸器内科は熱い頑張り屋の仲間も増え、臨床・研究・科の運営においても新たな取り組みも目白押しで、いつになく活気づいています。これからも飯塚病院呼吸器内科(家)をよろしくお願いいたします。


COPDと嚥下障害 ~学位審査とこれからについてのご報告~_d0264356_18202553.jpeg


# by res81 | 2021-12-23 18:56 | 科の紹介 | Comments(0)

未補正凝固異常患者に対する胸腔穿刺/チューブ留置は意外と安全【CHEST】

スタッフのTBです。
時々悩む臨床テーマですよね。


<背景>
・胸腔穿刺・胸腔チューブ留置は出血のリスクを伴う一般的な手技であるが、既存のガイドラインは過度に保守的である可能性がある。

<RESEARCH QUESTION>
・未補正の凝固障害を有する患者に胸腔穿刺と胸腔チューブ留置を行うことは安全か?

<STUDY DESIGN AND METHODS>
・このシステマティックレビューはPreferred Reporting Items for Systematic Review and Meta-Analysisガイドラインに基づいて行われた。
・PubMedおよびEmbaseを、2019年12月31日まで検索した。
・対象とした研究は、疾患(血小板減少症、肝硬変、腎不全など)または薬剤(抗血小板剤、抗凝固剤など)のために未補正の凝固障害を有する患者を対象したもの。
・関連するアウトカムは、大出血と死亡率とした。

<結果>
・18件の研究(5,134例)を対象とした。
・random effect meta-analysisの結果、大出血および死亡率は0%(95%CI、0〜1%)であった。
・出版社によるバイアスは認められなかった。
・抄録形式の6件の研究を除外し、残りの12件の完全な論文のmeta-analysisを行ったところ、プールされた大出血および死亡も0%(95%CI、0%-2%)であった。

<結論>
・胸腔穿刺や胸腔チューブ留置を受けた未補正の血液凝固異常を有する患者では、大出血や死亡の合併症は非常に稀であった。
・今回の結果は、適切に選択された患者においては、胸腔穿刺や胸腔管切開を安全に行うことができることを示唆している。


# by res81 | 2021-12-05 21:36 | 科の紹介 | Comments(0)

久しぶりの東京!

スタッフのTBです。

本日約2年ぶりに東京に参りました。
来年度の新しいチャレンジのご相談のためです。
久しぶりの東京!_d0264356_17232090.jpg
沢山の方々とお話しさせてもらい、エネルギーをチャージできました!

内容はまた後日ご報告出来ればと思います。

私も新しいチャレンジガンバリマス!!
(そして一人ラウンジに取り残される…( ;∀;))
久しぶりの東京!_d0264356_17232439.jpg

# by res81 | 2021-12-04 17:24 | 科の紹介 | Comments(0)

COPD増悪へのステロイド投与量最適化【CHEST】

スタッフのTBです。
ジャーナルパトロールです。


<背景>
・COPD増悪の治療のための全身性コルチコステロイドは、治療の失敗を減少させ入院期間を短縮するが、最適な投与量は明らかではない。

<研究課題>
・増悪したCOPD患者の入院中に、個人に合わせた用量のコルチコステロイドを投与することは、固定用量のコルチコステロイドを投与するよりも効果的であるか?

<研究デザインと方法>
・デザイン:前向き無作為化非盲検試験。
・対象:COPD増悪のため入院した患者
・介入:
 固定量投与群(プレドニゾロン40mg相当量を投与)
  vs
 個別化投与群
 ➤1:1の割合で無作為に割り付け
 ➤5日間投与

*個別化投与量の決め方
①増悪タイプ、CATスコア、以前の増悪の際のPSL用量、炎症マーカー値、血ガス値で決めるDosing scoreを計算
②投与量=0.5mg×体重(kg)×(1+Dosing score)
 ➤0~2.5mg×体重(kg)

・主要評価項目
 - 複合的な治療失敗指標=院内での治療失敗+退院後の中期的な治療失敗
・副次的評価項目
 - 在院日数と費用

<結果>
・248名→固定用量群(n=124名)と個別化用量群(n=124名)に割り付け。
*各群の1名の患者は、最初のCOPD診断が間違っていたため、治療目的の集団に含まれなかった。

・治療の失敗
 固定用量群 48.8% vs 個別化用量群 27.6%
 ➤相対リスク 0.40(95%CI 0.24-0.68)
  P=0.001

・院内での治療失敗率
 固定用量群 24.4% vs 個別化用量群 10.6%
 P=0.005

・治療期間中の失敗率、有害事象率、入院期間、費用は両群間で同等であった。

・治療失敗後、増悪を抑制するために必要な副腎皮質ステロイドの追加投与量は、個別化投与群のほうが少なく、治療期間も短かった。

・個別化投与群では、40mg以下の投与を受けた患者の平均治療失敗率が44.4%であったのに対し、40mg以上の投与を受けた患者では22.9%であった(P=0.027)。

<考察>
・副腎皮質ステロイドの個別化投与は治療失敗のリスクを減少させるが、これは40mg以下ではどちらの群でも低すぎたのに対し、より多くの患者に高い初期投与量、特に60mg以上が提供されたためである。



# by res81 | 2021-11-29 21:12 | ジャーナルパトロール | Comments(0)

COVID-19とOPの区別は難しい【AJR】


<背景>COVID-19肺炎のCT所見を非感染性の器質性肺炎(OP)と比較した研究は今のところない。

<目的>COVID-19、インフルエンザ、およびOPの胸部CTの特徴を比較し、これらの疾患を区別する際の放射線科医のパフォーマンスを評価する。

<方法>
・レトロスペクティブに、COVID-19 50例、インフルエンザ 50例、非感染性OP 50例(58±16歳)の胸部CT画像を対象とした。
・6人の胸部放射線科医が独立して下記について評価:14の個別のCT所見(水平分布、頭尾分布、片側・両側、結節影の性状)と、RSNA(北米放射線学会)のCOVID-19カテゴリー
・それぞれ最も疑わしい診断を下した。
・ランダム効果モデルを用いて3疾患の診断のCT特性を比較し、読影医の診断能力を評価した。

<結果>
・COVID-19肺炎は14個の胸部CT所見のうち、7個でインフルエンザ肺炎と有意に異なっていた(p < .05)
・COVID-19肺炎は14個の胸部CT所見のうち、4個でOPと有意に異なっていた(p < . 05)
 ✓中心性またはびまん性の陰影分布:
  COVID-19症例の10%と7% vs
   OP症例ではそれぞれ20%と21%
 ✓片側性の陰影分布:
  COVID-19症例の1% vs
   OP症例の7%
 ✓tree-in-budではない結節:
  COVID-19症例の32% vs
   OP症例の53%
 ✓tree-in-budの結節
  COVID-19症例の6% vs
   OP症例の14%

・COVID-19症例の70%、インフルエンザ症例の33%、OP症例の47%が、RSNAのCOVID-19カテゴリー評価に基づく典型的な所見を有していた(p < 0.001)。
・放射線科医の平均診断精度:
 COVID-19肺炎…70%
 インフルエンザ…68%
 OP…68%

<結論>
・COVID-19のCT所見は,インフルエンザやOPのCT所見と重複していた。

<CLINICAL IMPACT>
・COVID-19はOPと類似しており、鑑別は困難。特にOPを起こしえる背景の患者(何らかの薬剤投与中)がかなりの割合で存在する臨床環境では、特に鑑別は厳しいだろう。

# by res81 | 2021-11-25 23:55 | 感染症 | Comments(0)